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サンフランシスコなう


小学生に、チョコの街頭売りをさせる。校長の真意は?

2015/09/01

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うちの子供たちが通う小学校はカトリック系の私立だが、日本人にはなじみにくいイベントが一つある。学校への寄付(ドネーション)のため、子供たちにチョコバーの街頭売りをさせることだ。半強制的に。
 

「Get Money!」 箱買いをあおる、敬虔なカトリックシスターの校長
買わされるのは、チョコレートバー(板チョコ)がぎっしり詰まった小包大の箱。ひと箱60ドル。一家につき4箱がノルマで、240ドルを払う。約3万円だ。チョコバーが計120本あり、家族だけでは食べきれない。「街で売ってきなさい」が、学校の基本スタンスだ。実際、この時期になると、近所のショッピングエリアの駐車場で小学生やボーイスカウトが小さなテントを立て、チョコ売りをしているのが目につく。
 
学校でチョコ箱が配られる日の朝礼は見ものだ。いつもは温厚で敬虔なイタリア系シスターである熟年の女性校長が、マイク片手に「Everyone! Get Money!」とこぶしをぶち上げる。「Yeah!!」と応える生徒たち。銭ゲバ軍団か?万事、ノリで楽しむのがアメリカ人の良いところ。学校には300万円超が入ることになり、去年は体育館の照明が明るいLEDになった。
 
さらに、インセンティブが用意されている。キャンペーン期間が終わると、一人で4箱以上購入した生徒は、貢献者として表彰されるのだ。朝礼で名前を読み上げられ、喝采を浴びる。去年は全校生徒の半数が起立した。
 
なぜ親がそんなにお金を出すかというと、学期末に、貢献した生徒は遊園地に招待されるからだ。普段は制服だが、その日は、私服を着てくる権利がもらえる。遊園地へのバスが出発した後、残った制服組は、体育館で映画ビデオを見て、一日をぼんやりと過ごす。うちの子供も、友達と遊園地に行きたくてもっと買えとねだるが、3人いると720ドル=9万円にもなり、ちょっとできない。直接チケットを買った方がよっぽど安い。恐るべきは、カトリック系でありながらの、3段インセンティブだ!
 

街頭売りを楽しむ子供たち。 お金儲けは悪徳か、貴重な体験か?

日本ではお金儲けは悪徳とみなされるが、アメリカンドリームが生きる米国では、子供がお金を得る苦労や楽しみを体験することは貴重だと考えられているようだ。
 
去年、娘は、近所のスタバ前で、クラスメイトと街頭売りに初挑戦した。地元の大人たちは慣れていて、気さくに1本2ドルのチョコを買ってくれる。スタバの店員が営業妨害だとクレームを言う事もなく、にこやかに、調子は?と声を掛けてくれる。アメリカの大らかさを実感する瞬間だ。車の陰で見守っていたが、チョコ30本が20分で売切れてしまった。さて、今年はどこで売るか?(Y)

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