津谷祐司 公式サイト

サンフランシスコなう


トロント国際映画祭 2014

2014/09/07

 
9月3日からカナダのトロント市で「トロント国際映画祭」が始まった。急ぎ2泊、自腹で行ってきた。

 
11日間で300本の映画が上映される

トロント映画祭は、カンヌやベルリンと並び称される映画祭で、北米では最大規模。来場者30万人を誇る。ノン・コンペティション主義のため、最高賞は観客賞だ。最近は、11月からのアカデミー賞予備選考の前哨戦と捉えられていて、関係者の注目も熱い。

 
会場は、ハイアットホテルを中心とした街の一角。上映は、10以上のスクリーンを持つシネコン2つと単幕の3劇場で行われ、11日間で300以上の映画が上映される。8万円の業界パスを買えば、この 全てを観れる。
 

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バイヤーが見るのは20本。海外セールスと交渉し、数百万~数千万円で買い付ける
バイヤーは世界中から集まる。現地入り前に、ストーリー、監督、主演といった情報から目当てを絞り込み、実際に観るのは20本くらいらしい。それでも一日3本で七日かかる。朝から映画漬けだ。

 
映画祭では映画の完成形を確認。自国での観客数やビデオ販売数の見当をつけ、希望価格を算出する。ハリウッドメジャーの映画以外は、数百万から数千万円で買い付けられるものも多く、超ビックビジネスというわけでもない。中古スーパーカー数台の投資といったところか。

 
売り主側は、昔は配給会社が直接来たが、最近は、海外専任のセールスレップが来る。レップにも得意エリアがあり、世界販売したい場合は、アジア映画の売り主でも欧州のレップに委託するそうだ。幅広い世界人脈がモノを言うらしい。逆にアジアに売りたい作品は、アジアのレップが重宝される。上映後、バイヤーと売り主は値段交渉を始める。この映画祭ではブース会場が設けられていないため、売り主側はホテルの部屋に陣を張る。契約がまとまれば基本条項にサインし、詳細は帰国後詰める。

 
映画の商品価値は、客の入りで決まる。投資に見合わないのは、ダメ映画
人気の映画は、関係者上映でも1時間くらい並ぶ。今回の話題は、ロバート・ダウニーJrの『THE JUDGE』と、ジュリエット・ビノシュの『CLOUS OF SILS MARIA』、アル・パチーノの『THE HUMBLING』。僕はJUDGEだけ見れた。人気のない映画はガラガラだ。売り手の落胆ぶりを想像してしまう。
 

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『1001 Grams』という、マイナーそうなノルウエイ映画も観た。キログラム原器を守る30代の女性科学者が、父の死を乗り越え、同じ研究界のフランス人男性と恋する話だ。実に淡々とした映像だった。

 
上映されたのはシネコンで、劇場内は六本木ヒルズTOHOシネマと変わらないのだが、上映後ロビーに出た時の雰囲気が違った。様々な人種のバイヤー達が、真剣な表情で立ち話。耳をそばだてると、彼らの話は、面白かったかどうか、ではない。小さい映画なりに、30代OLか50代主婦か、どんな層にフィットするか、何人が劇場に足を運びそうか、そういったことだった。映画が商品として扱われる。投資に見合うリターンがない映画はダメ映画なのだ。

 
知らない世界、ユニークな視点への好奇心に応えたい
有名俳優が出るものは別にして、中堅の映画は、いかに選ばれるのか?これだけ映画があると、本屋に並んだ本のようで、どれも同じに見える。差別化が、勝負の第一歩だろう。映画1本毎に、分厚いパンフレットの1頁が割り当てられるが、一枚のメイン写真と短い紹介文は研ぎ澄まされていた。

 
映画は溢れている。人はその中を、もっと知らない世界を見たいと、貪欲に探し回る。見たことのない風景、人間への斬新な視点、ユニークな描き方。自分独自の世界を掘り下げるのが最強だろうか?

 

以上

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