津谷祐司 公式サイト

サンフランシスコなう


世界最大のサンフランシスコ日本語補習校

2014/05/10

 

日本語の学力を維持するために、子どもたちは毎週土曜日、日本語補習校に通っている。「サンフランシスコ日本語補習校」は、サンフランシスコ市内と、シリコンバレーの中心サンノゼの2か所にあり、幼稚園年長~高校2年生までの、約1,500人の子ども達が在籍している。昨年ロサンゼルスを抜いて、世界最大に。サンフランシスコという都市の経済的盛況が伺える。

 
文部省の「学習指導要領」に基づき、日本の小学校では週5日の授業で勉強する量を、週1日の授業で習得する。そのため、毎週膨大な量の宿題がでる。特に、「漢字」は、各家庭、親子で壮絶な戦い(!)をしながら子どもに学ばせている。

 
先日、校長先生(文部省から派遣されている)の「学習指導要領の変遷」の話がとても興味深かった。以下、私の理解として書く。
1960年代、「スプートニクショック(=ソビエトが人工衛星を打ち上げ、西側諸国がショックを受けた)」によるアメリカの科学技術重視教育もあり、日本も高度経済成長に合わせ企業での即戦力が求め米国の教育方針に追随した。結果、「詰込み教育」「落ちこぼれ」という言葉が生まれ、いかに落ちこぼれを出さないかが、教育現場の重要課題に。
しかし1980年代、今度は「日米貿易摩擦」が起こり、アメリカから「日本は労働時間を短くすべき」という圧力がかかり、日本政府は公務員の時短に向け、段階的に週5日制を導入。詰め込み教育の反省もあり、「ゆとり教育」、すなわち知識を詰め込むのではなく、「自分で考え生み出す力をつけさせよう」という方針に。授業数も減り、教科書のページ数も10%以上少なくなった。
2000年代に入り、ゆとり教育も、例えば「円周率3.14→3」を改悪だと、マスコミのバッシングの標的に。折しも、2003年のPISA(国際学習到達度調査)で、日本が10位以下に落ちたこともあり、ゆとり教育の見直し論が高まった。通常、学習指導要領は10年ごとに改定されるらしいが、これを受けて、途中で、異例の追加任意学習の項目が増えた。最新の改定では、また教科書のページ数が増やされ、以前に戻ってきている。

 

日本語補習校の合言葉は「かけ橋」。日米、ひいては世界のかけ橋になる人材に!という意味だ。
数十年前は、日本人が英語を話せて日米の文化を体験していることは特殊能力で、それを活かしかけ橋になる人材へということだろうが、このグローバル・ネット時代、かけ橋という概念はちょっとピンとこない。世界に向けて仕事をするのが当たり前になっていく世の中で、世界共通言語の英語、そして最大国であるアメリカ習慣を知り、かつ日本人には意識の薄い「多様性(=ギャップの許容力)」を身につけていることこそが武器になるのではないだろうか。(N)

 

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