シリコンバレーで学ぶ② トップダウン型のリーダーシップ
本シリーズでは、停滞する日本が「新ビジネスを次々生み出すシリコンバレー」から学ぶべきものは何か、を考えている。1回目は「キャリア自力開拓の精神」を取り上げた。今回は「組織のあり方」と「リーダーシップ」に焦点を当てる。新ビジネスを次々生み出す、組織とリーダーのあり方とは?
◆シリコンバレーは「トップダウン型」、日本は「ボトムアップ型」
シリコンバレーで経営をスタートさせてから、日本とは組織のあり方が違うと感じることが何度もあった。基本的に、シリコンバレーは「トップダウン型」日本は「ボトムアップ型」だ。
シリコンバレーでは、社長と平社員がファーストネームで呼び合うなど人間関係はとてもフランク。誰もが自分をアピールする文化なので、平気で社長室のドアをノックしていろんな提案をしてくる。正直稚拙なものも多く、最初のころは無下にはできないと対応に困っていたが、間もなく分かったのは、上司が一旦「A」と決めると、本人の意向は「B」でも素直に従う文化だということだ。日本だと「せっかく提案したのに」と後を引きそうだが、なぜこういうメンタリティが醸成されたのか?
一番の理由は、役職ごとに責任と権限がはっきりしているからだと思われる。プロジェクトが失敗したら、その責任はリーダーが負う。「クビになるのは自分」と認識しているからこそ、リーダーは部下が何と言おうと自分が信じる道を強く推す。部下のほうも、自分に権限がないことが分かっているので無駄な反発はしない。決定権を持ちたいなら、リーダーに上り詰めるのが先なのだ。もちろん、決定権を持つとはいえ、リーダーが専制君主的な振る舞いをするわけではない。その道を選んだ理由を丁寧に説明するのは当然だ。
日本の場合、言葉使いや作法など人間関係の上下は厳しいが、仕事上の意識はリーダーも部下も横一線に近い。だから、プロジェクトが失敗したとき、その責任はチーム全体にあるとされることが多く、リーダーの降格は起こりづらい。個人責任の追及は、日本人のメンタリティにも反する。だから、リーダーは強く主張するより、部下の意見を集約する「受けの立場」になりがちだ。
こうした差が生じるのは、日本と西洋の主従関係に歴史的な違いがあるからだろう。一言でいうと、日本は殿様と家臣の間の準血族的で長期的な関係。西洋では、騎士が真に仕えるのは神であり、現世の主人との契約はビジネスライクで短期的なもの、という関係が醸成されているということだ。*詳しくは、おまけコーナーで。