津谷祐司 公式サイト

クリエイティブ起業のすすめ


シリコンバレーで学ぶ① キャリア自力開拓の精神

2016/04/26


0426_image

株式会社ボルテージ
代表取締役会長 ファウンダー
津谷祐司





 サンフランシスコに子会社「Voltage Entertainment USA」(SFスタジオ)を設立し5年目。これまでに10億円投資し、現スタッフは30人。まだ赤字だが、経営にシリコンバレー流を取り入れることで黒字化が見えてきた。
 
 この3回シリーズで話したいのは、停滞する日本が「新ビジネスを次々生み出すシリコンバレー」から学ぶべきものは何か、ということだ。1回目の今回は、シリコンバレーで働く人のキャリアパスに対する意識、行動をみる。
 
◆「道は自分で切り開く」この精神が、ビジネスの新陳代謝を引き起こす

 そもそも日本の停滞の原因は何か?日本人の頑張りや能力が低下したのではない。前時代のやり方を引き摺っているからだ。
 
 戦前の話だが、日本もシリコンバレーと同じ「即戦力採用・途中解雇」が一般的だった。ところが戦後、偶発的に「新卒一括採用・終身雇用・年功序列」という仕組みが生まれた。これは、人口急増を背景にほぼ全ての業界が一律に右肩上がりとなったため、企業が人手不足を解消する必要に迫られたからだといわれる。内部に人材を留保するための施策だったのだ。この仕組みは時代に合致し、40年に渡る成長の基礎となった。
 
 しかし90年代前半、日本は人口減少にともなう成熟期に入った。以来、20年の停滞だ。国内消費のパイが大きくならないのだから、社会を活性化させる方法は新陳代謝しかない。そこで、シリコンバレーから新しい発想を得たい。
 

0426_ent

 SFスタジオの設立時、スタッフは一から募集し、採用した。他社は地元企業を買収する形が多く、我々のスタイルは珍しかったと思う。僕はかつてUCLAで自主映画を作っていて、新聞広告で俳優やカメラマンを集めていたので、やるなら全部自前で、という感覚があった。1000枚のレジュメ(履歴書)と300名のインタビュー(面接)を重ねたが結果、日本とシリコンバレーの職業観の違いを目の当たりにした。
 
 彼らは「自分の道は自分で切り開く」という意識がとても強い。日本人は真逆で、会社任せという意識の人が多い。移民国家では主張しないと埋没し、ムラ社会では主張するとギクシャクする、という背景もあるが、直接的には「新卒・終身・年功」の影響だ。
 
 シリコンバレーが強いのは、この「自力開拓の精神」が「ビジネスの新陳代謝」を引き起こしているからだ。受け身体質のままでは、日本はいつまでたっても活性化しない。グローバル競争にも勝てない。シリコンバレー的「自力開拓の精神」を取り入れるべき時が到来している。
 

◆就職の際は、自力で職種を決める。自分の力量と市場性を客観視する力

 自力開拓が最初に現れるのが就職時だ。日本では、入社時には職種は決まっておらず、研修などで適性を見極められ、マネジメントが配属を決める。しかし、シリコンバレーでは営業なら営業と、完全な「職種採用」だ。自分で職種を決め、応募しなければならない。
 
 人気職種は競争が激しい。かといって、花形の仕事に就きたい若者が、能力を考え第二志望にターゲットを変える、といった決断をするのは難しい。日本のようにベテランによる判断の方が当面のマッチング精度は高いだろう。
 
 しかし、自分の力量と市場性を客観視することは、大きな力になる。それを繰り返すことで、有望市場を見極め、自分の価値を高めることにもつながるだろう。この力がないと時代遅れの職種に居続けてしまうかもしれない。
 
 では、シリコンバレーの新卒が「最初の職種」を見いだす手立ては何か? それは、大学の夏休みや、卒業後のギャップ・イヤーに行われるインターンシップだ。
 
 就職前、仮採用のかたちで、エントリー(基礎的職種)やアソシエイト(補助的仕事)を経験する。例えばゲーム業界では、「QA」(品質テスト)というエントリーカテゴリーがあり、ユーザー視点でゲーム評価をするが、エントリーの仕事はこの手の、浅く広く業務全般をサポートするものが多い。
 
 続けるうち「自分にはこれが向いている」と明快になる。1年後には、希望職種での正式採用を掛け合ったり、募集中の他社にアプライするようになる。日本にも「1日インターンシップ」「初期ローテーション」はあるが、今後はこのような「半年インターン」「エントリー職種」の活用も考えるべきである。

 

voltage-43
1 2 3 4 5
このページの先頭へ