シリコンバレーで学ぶ② トップダウン型のリーダーシップ
##column
シリコンバレーは人間を役割に当てはめるvs日本は人間が役割に合わせる
森本作也氏の著書『グローバル・リーダーの流儀』では、シリコンバレーの組織を「レンガ型組織」、日本の組織を「石垣型組織」と呼んでいる。それは主従関係の違いによるものだといわれているらしい。最初、この本を読んだときはよく分らなかったが、シリコンバレーで1年ほど経営を続けるうちに森本氏がいうところの違いが理解できるようになってきた。
シリコンバレーの組織形態といわれるレンガ型は、役職ごとにやるべきことが明確に決まっていて、人がその役割に自分を当てはめる。いってみれば鋳型に人間をはめ込むという考え方である。レンガを並べてつくられた壁のように、同じ大きさの塊が交互にきっちりと積みあがっているイメージである。
日本の場合の石垣型は、同じような立場の人間でも、人によって得意不得意があるので、その人の能力を最大限に生かして仕事してもらう、という考え方。その石垣は遠目には均一の形にそろっているが、一つ一つの石は大きさも形もばらばらだ。しかし、うまくはめ込まれて隙間はない。
日本の殿様と武士の関係は、生涯を通じた一蓮托生のもの。主君の入れ替わりは基本的にないので、先々まで考え誠心誠意尽くす。主君は別格だが、武士同士は平等意識が強いので全員が助け合う。西洋は騎士が仕えるのは神であり、主人との契約はビジネスライクで短期的。成果を上げないと首になるし、別の主人に乗り換えるのもアリ、というある意味ドラスティックな文化だ。
レンガ型の組織には無駄が少ない。だからスピードは速い。ただし、仕事がうまくいっている時はいいが、変化があった時に自動的に変化・吸収はできない。だからリーダーがそれに気付いて、そのたびごとに分担を決め直す必要がある。
一方の石垣型は、人がその変化に応じて役割を合わせていく。環境が変わったときは、アメーバのように各人が能力を生かして自然にその変化に対応すべく各員の役割を調整する。そのため、リーダーが人為的にやり過ぎないほうがうまくいく場合が多いのだ。
レポートラインも明確
日本の組織では、若手社員が、直属の課長ではなく、その上の部長からアドバイスを受けた場合でも素直にそれに従う、ということはよくある。また、隣の課の課長のアドバイスにも真摯に耳を傾けるのも一般的だ。
しかし、シリコンバレーの人たちはそういうことはしない。部長が言ったことも横の課長が言ったことも、悪くいえば無視する。「レポートライン」を重要視しているから、直属の上司以外の指示は聞かない。雇用契約の相手は、会社ではなく、直属の上司という意識なのだ。僕も、現場担当者への気軽なアドバイスは避け、彼らにやってほしいことは幹部層に伝えるように改めた。
◎Vol.3 「ボルテージUSA、3年の挑戦」に続く。
構成/菊池徳行・馬島利花(ハイキックス)