シリコンバレーで学ぶ③ ボルテージUSA、悪戦苦闘の4年
◆40代後半リーダー層を採用。ようやく先が見えてきた
その後、マネジメント、アート、システムの各部門で40代後半のシニアリーダーを採用することができた。3人とも10年レベルの専門スキルを2、3分野にわたって有しており、十分な実力を備えている。また、無駄な力が抜けている点もいい。
30代のリーダーだと、部分最適に固執したり、過剰な機能を盛り込みがちだ。例えばエンジニアの場合、既存のシステムの欠点を並べたて、新しく作り直すことを提案してくる。ほぼ全員がそうする。一方40代後半のリーダーは、稼働しているものは温存し、最低限の追加改修のみを行う。また、部下の使い方もうまい。腕の悪い部下がいたとしたら、30代のリーダーは熱心に指導してしまうが、40代後半のリーダーは、彼らの職階を一段下げることで仕事のペースを落とさせ、指導は最低限にして本人の奮起を待つ。社会人なんだから、上司がすべて面倒みる必要はないだろう。
こういったことは、僕自身もそうだったが、長いリーダー経験の中で失敗を重ねながら身に着けるものだ。優秀なリーダーを育成したいなら、あるレベルに達したと思えたタイミングで、おっかなびっくりでも重要なプロジェクトを任せて悪戦苦闘してもらうのが一番だ。見込みがあってやる気のある30代には、そういった経験を与えるべきだとつくづく感じた。
4年目の結果としては、翻訳型アプリを6本、ドラゴンタイトルを1本ローンチし、さらに、初のFのベータ版も出すことができた。「ドラゴン」とは、絵柄は日本のアニメ絵だが、登場人物や舞台は米国人、米国都市とした新ジャンルだ。サンフランシスコで大人気の、日本の寿司をアメリカナイズした「ドラゴンロール」という巻きずしにちなみネーミングした。さて、津谷・東がシリコンバレーを離れ、帰国するまで残された時間はあと半年。さらに強い組織および仕組みづくりを急がねばならない。
◆これからのボルテージUSA 世界展開の拠点に
一般に、これからのアプリ市場はF2Pが主流であり、P2Pは早晩すたれるもの、と思われている節がある。しかし、僕の認識ではP2Pには落ち着いて楽しみたいと考える一定のファンがいる。よって、P2Pに関しては、定期的なローンチペースを確立し、スタッフ育成につなげていきたい。一方、F2Pのほうは、立ち上げまで1年半かかったエンジンが、ここにきて枯れてきたため、改善しながらユーザー満足度の向上に励みつつある。また現在、複数の新たなエンジン開発も進めており、手ごたえはある。黒字化も近いのではないだろうか。
今後は、P2PとF2Pをバランスよく組み合わせながら、恋愛アプリの楽しさをアニメファンのみでなく全米の一般層にも広めたい。
5年目を迎えた今、SFスタジオは当社の世界展開の要になると確信している。日本語→各国語への展開は難しいが、英語→仏語、独語、西語、中国語への展開はかなりやりやすいからだ。近い将来、それら世界各国への拠点づくりを手がけていきたい。