シリコンバレーで学ぶ① キャリア自力開拓の精神
◆これからの世界競争は、新陳代謝のスピードが勝負
話は少しそれるが、日本の新陳代謝について。「日本は産業構造の進化が遅い。その原因は、既存企業の保護や雇用維持を重視するからだ」とよく言われる。衰退分野の企業が社員規模を維持したいとなると、撤退すべき事業を引きずり、新規事業立ち上げのエネルギーが損なわれる。
雇用維持の考えは成長期には適合していた。働く側にとっても短期的には有利だ。しかし、一時的な痛みはあってもレイオフにより新陳代謝のスピードが速まることで、成長分野のベンチャー企業が生まれやすくなり、結果、社会全体として働くチャンスが増える。そのほうが正しいのではないだろうか?
シリコンバレーはそのサイクルが圧倒的だ。ITだけでなく、バイオ、電気自動車、宇宙航空、農業技術などの新しい産業へ積極的に人材が移動する。しかし日本ではIT以外の分野に新しい企業がなかなか出てこない。
戦後の日本経済は、殖産興業から加工貿易へと構造変化が一気に進んだ。敗戦が経済成長のきっかけとなった。しかし、今の日本にそんな激変は起こらない。家電やパソコン産業は、構造的立て直しもなく、ずるずると衰退している。
国の成熟度に合わなくなった産業はあきらめ、高度な先進分野にチャレンジすべきだ。IT業界での「高い流動性」、一般企業でも「早期退職」「正社員数の抑制」は当たり前になっているが、日本に合った新陳代謝の方法を真剣に考えるべきタイミングだ。
◆意欲ある人ほど大企業がゴールにあらず。40代はマネジメントを目指す
彼らは仕事の最終ゴールをどこに置いているのだろうか? 日本だと、いまも「大企業の役員に登り詰める」という考え方が根強い気がするが、シリコンバレーでは、そういう考え方は少数派だ。
若いうちは一度くらい大企業を経験してみたいかもしれないが、40~50代になって十分な経験を積んだ後は、企業規模の大小にこだわらないように思える。自分で会社を始めたり、中堅企業でマネジメントの立場に就いたり、という人が多い。よく聞くのは、一流のビジネススクールで最高成績の学生は起業を考え、企業幹部やコンサルティングファームを目指すのは2番手グループという話。レベルが高くなるほど、自力開拓の考え方が強くなるといえる。